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日本顎咬合学会・学術大会に参加してきました《その3》

6月17日-18日に東京国際フォーラムで行われた日本顎咬合学会・学術大会に参加してきました。

内容が盛り沢山なので、全3回で学会の様子をお届けしています。
前回は学会で紹介されていた『今後増えると予想される病気』をご紹介しました。

学会発表は自分へのノルマ

学会では私もポスター発表をしてきました。

これで今年のノルマは達成です!
というのも《毎年1回はどこかで発表をする》というのを自分へのノルマにしています。
症例発表というのは自分の治療を振り返り、他の先生からのアドバイスをもらうとても良い機会です。
日々の診療に追われる中で、誰に目も入らず治療をしていくと治療の質は落ちていってしまいます。
家にお客さんが来るとなったら隅々まで家の中を綺麗に掃除するようなものです。誰かに見られるとなったら細かなところまで気を遣って経過が分かるように写真を撮ったり、論文のデータを集めたりするのです。

チェアワークとデスクワーク

そもそも歯科治療はチェアワークとデスクワークが両輪となって進むものだと言われています。
チェアワークというのは、歯を削ったりセラミックを入れたり手術をしたり、患者様に対して治療を行うことで、みなさんがよくご存知の部分です。
一方デスクワークというのは、レントゲンや検査結果などを元に、診断を行ったり治療計画を立てたりすることです。症例発表も自分の治療がどうだったのかを振り返って、こうすればもっと良くなっていたのではないかと考えることにつながるのでデスクワークの一環です。
だから歯医者は患者様がいない時も仕事をしてるんですよ?

ここだけの話ですが、デスクワークをないがしろにしている歯医者は多いです。
治療計画を立てていないから1本の虫歯が終わってから「あと他に治療するところはないかな?」と探して「あ、ここにも虫歯がありました、次回はここを治療しましょう」という具合です。
簡単な処置ならそれで問題ないこともありますが、噛み合わせなど口の中全体が関わる治療になってくるとそんなやり方では大きな問題が起きてしまいます。
またこれについてはブログで紹介したいと思います。

自分の発表について

話を戻して今年の学会ではインプラント症例のポスター発表をしました。
この症例は、前歯が折れてしまった患者様で、歯ぐきが腫れた状態でした。
折れた歯を抜くと同時にインプラント手術をして、しかもルートメンブレンという特殊なテクニックを使って骨が吸収しないように工夫した症例の発表です。
治療期間は約3ヶ月で、短期間で良い結果を残せた症例なので発表することにしました。

皆さんの周りにインプラントをしたことがある方はいらっしゃいますか?

開院当初にしちご歯科にインプラントの相談に来られた方がいました。
その方は別の歯科医院で前歯のインプラントをして、1年くらい前歯がない状態でした。

「3ヶ月後に次の処置がある予定だけど、もう早く歯を入れて治療を終わらせたい」という相談でした。
しかし前の医院で治療費も支払い終えられていますし、どんなインプラントを使用されているか分からなかったので治療を引き継ぐことは出来ませんでした。
あの方も最初から当院で治療させてもらっていたら、3ヶ月で治療が完了していただろうな、と思います。

一般的にインプラント治療は1年ほどかかります。
しちご歯科のインプラントは3ヶ月ほどで終えられるので、その典型的なパターンを今回の学会で発表いたしました。

歯科のメーカー賞を受賞する候補にまでなったのですが、残念ながら受賞はできませんでした。
学会から送られる優秀賞は後日発表になるのでそちらを受賞できていたらいいな、と思っています。
賞を獲れるかどうかは別として、学会発表は自分の治療を振り返れる良い機会ですので、今後も毎年1回は発表をし続けようと思います。

これで今回の学会発表の報告は終わりです。
また来年の学会に向けて、チェアワークとデスクワーク、どちらも怠らずに励んでいこうと思います。
最後までご覧いただきありがとうございました。

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日本顎咬合学会・学術大会に参加してきました《その2》

6月17日-18日に東京国際フォーラムで行われた日本顎咬合学会・学術大会に参加してきました。

内容が盛り沢山なので、全3回で学会の様子をお届けしています。
前回は学会で紹介されていた『最先端の技術』をご紹介しました。

今後、増えると予想される病気

学会では今後の歯科界の展望なども論じられていました。それについても少しご紹介します。

顎関節症

コロナ禍での長期間のマスク生活で、知らず知らずのうちに身についてしまった悪い習慣があります。それはTCHと呼ばれる癖です。

TCHとはTooth Contacting Habbitの略で、上下の歯を長時間接触させ続ける癖のことです。通常は上下の唇を閉じた時には、歯は接触していません。上下の歯の間には1〜2mmのスペースがあるのが正常です。でも、それが正常だとは誰も認識していないので歯を接触させてしまっている人が増えているようです。

特にマスクをしてスマホを見るために頭を下げている姿勢だと上下の歯は接触しやすいです。その状態で何時間もいると、歯や顎に大きな負荷がかかってしまいます。そして顎関節症になってしまうのです。

逆に顎関節症になってしまった場合の治療法は、まずはTCHを治すことです。TCHについてはこちらで詳しく説明しておりますので、ご覧ください。

 

Tooth Wear

次は高齢者に起こりやすい病気です。昔は高齢になると歯がなくなって入れ歯になる方が多かったです。最近では、自分の歯がちゃんと残っている方が増えてきました。ですが歯が残っているとそれはそれでトラブルが起こるのです。
そのトラブルがTooth Wearと呼ばれる病気です。
Tooth Wearは歯が溶けたり、すり減ったりすることでしみたり痛んだりする病気です。


(写真はイメージ図です)

今回、ある先生の発表で歯がすり減ってしまった高齢者の歯を治療している症例がありました。
今は人生100年時代だから60歳といってもあと40年噛める治療をしないといけない。それには高齢者だからといってある程度の妥協的な治療で終わらせてしまうのではなく、全体の歯の大工事を行なってでも積極的に噛める状態に戻す治療を行なっていくべきではないかとおっしゃっていました。

高齢者だけでなく、過食症や拒食症の影響で歯が溶けてしまう方もいます。特に日本はストレスを溜め込む人が多いです。ストレスは寝ている時の歯軋りや摂食障害にも繋がっていきます。これからどんどんTooth Wearの患者さんが増えていくことと思います。そういう方を助けるためにもTooth Wearをどうやって治療するか、もっと勉強していこうと思いました。

次回はついに最終回です。
院長山﨑が行った学会発表についてお話ししますね。

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日本顎咬合学会・学術大会に参加してきました《その1》

6月17日-18日に東京国際フォーラムで行われた日本顎咬合学会・学術大会に参加してきました。

日本顎咬合学会とは会員数約9000名を擁する国内最大規模の学会です。学会の分野も非常に多岐に渡り、矯正や入れ歯など咬み合わせに関わる発表はもちろんのこと、1本の歯を守るための治療や、衛生士による歯磨きの指導方法など様々な分野の発表があり、とても勉強になりました。

コロナが明けて(?)3年ぶりの現地開催で、みんなウキウキしていたと思います。学会ってウキウキするんですよ。いろんな先生が「俺の症例ドヤァ」ってお披露目するのが学会なんです。そりゃもうすごい発表が盛りだくさんです。それに刺激されて、明日から自分も頑張ろ!ってなれるんです。

夜には勤務医時代に親しくしていた先生たちとの飲み会もあります。築地のお寿司を食べながら「最近どうしてるん?」なんて情報交換をするんです。そっちがメインじゃないですよ?

ちゃんと勉強してきてます!って証明するためにも、どんな学会だったかご報告しますね。

最先端の技術

まずは今回の学会でとても興味深かったトピックをいくつかご紹介します。

フェイススキャン

様々な企業でDX化が進んでいるように、歯科の分野でもデジタル技術を駆使した治療が進んできています。今までは「歯」、「歯を支える骨」、そして「顔の写真」をバラバラのデータで記録して、それを見比べながら治療の計画を立てていました。しかし、歯型の石膏は加工すると元には戻せませんし、アナログのデータでは立体的に歯と骨の位置関係を重ね合わせて見ることはできません。そこでデジタルデータによる加工や重ね合わせの技術が発達して、歯のデジタルデータを記録する口腔内スキャナーや骨を立体的に撮影するCTなどが普及してきています。しちご歯科でもそれらのデータを駆使して安全な矯正治療を行なっています。

 
今回はさらに一歩進んで、新しい機器が日本で発売されることになり展示ブースができていました。それが「フェイススキャン」です。

フェイススキャンは、顔の立体的なデジタルデータを記録するものです。顔の立体のデータを何に使うの?って声が聞こえてきそうですね。

例えば出っ歯を治して綺麗にしたい、という患者さんがいたとします。矯正でもセラミックでもいいですが、治った後の状態がどうなっているか、患者さんはイメージ出来ているでしょうか?「はい、これで治療終わりですよ」と鏡を渡されて前歯を見た時、正面から見ると普通かもしれないけど横から見るとまだ出っ歯やん!ということはたまにあります。

これはドクターがイメージしている治療後の状態が患者さんに伝わってないから起きるトラブルです。治療をする前に「治療が終わったら横顔はこうなります。斜めから見たらこうなります」というのが伝わっていれば、こんなトラブルは起きません。

とはいえ、顔の立体のデジタルデータがなければ正確な治療後のシミュレーションはできません。だから現状では患者さんにイメージしてもらう方法がないのです。平面の横顔写真を加工して見せることはできますが、それはあくまで予想図であり机上の空論である可能性もあります。

今回のフェイススキャンは図にあるように歯と骨と顔とを全て重ね合わせて視覚的に分析できるツールなので、ドクターも診断がしやすいですし、患者さんもイメージがしやすいです。

しちご歯科でもいつかフェイススキャンを導入したいと思っています。実を言うと、このフェイススキャンが出ることは開業前に分かっていました。こちらが開業前にレントゲン機器を選んでいるときの様子です。

当時はまだ韓国でしか発売されていなかったのですが、いずれ日本に来ることが分かっていたのでそれが日本で発売された時にスムーズに導入できるように、同じメーカーのレントゲン機器を購入したのです(えらい!)
同じメーカーじゃないとデータの重ね合わせがうまくいかなかったり、重ね合わせるためにさらに別の機械が必要になったりするのです。なのでいつかは導入する予定なのですが、なんせ高価な機械なのでしばらく待っていただけたらと思います。

歯髄培養治療

いやぁ、本当にこれには度肝を抜かれました。ついに歯科もここまできたか、と感慨深いです。
一般的に、大きい虫歯ができた時には神経を取る治療を行います。歯の中にある神経の正式名称は歯髄(しずい)と言います。歯髄は歯を守っている重要な役目があり、それを取ってしまうと歯の寿命は短くなってしまいます。ですから、できるだけ歯髄を残すためにAIPC(エーアイピーシー)を行ったり、感染した歯髄だけ除去して健康な歯髄をMTAセメントで保護する治療などが行われてきました。

関連ページ

    AIPCについて
    こちらの虫歯治療のページでも触れていますが、また詳しくブログでもご説明しますね

 
でも最新技術を使えば自分の歯髄を復活させることができるのです!!
抜歯した自分の親知らずなどの歯髄を培養保存し、歯髄を全て取り除いた後でその細胞を入れると、なんと歯は感覚を持った元の状態に戻るようです。
まだまだ発展途上の技術ですがこれが安定して結果を残すことができたら歯科にパラダイムシフトが起こることは間違いないです。今までは、歯髄を取った後にはガッタパーチャーというゴムのような人工物を歯の中に入れて密閉していました。
でも大学では習っていたんです。「歯髄が最良の根管充填物です」と。
つまり、どんなに綺麗にガッタパーチャーで歯の中を密閉しても、自分の歯髄で満たされている歯には敵わないんだから、出来るだけ歯髄を残しましょうね、ということです。歯髄を歯の中に充填する(つめる)ことなんて不可能だけど、そういう言われ方をしてきたんです。

でもこれからは違います。悪くなった歯髄を取って、培養した自分の歯髄を充填する。そんな治療が可能になる日が来るんです。
「神経をとった後、どれで詰めるのがいいですか?保険治療なら人工物です。でも自費治療なら最良の根管充填物である自分の歯髄も選べますよ」なんて説明する日がいつか来るということです。ワクワクしますね。

(かなり長くなったので続きは別の記事で紹介します)

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