骨造成が必要と言われたけど…
そもそも骨造成って何?
「歯医者で『骨造成しないといけない』と言われた」
「インプラント手術で人工の骨を入れましょうと言われたけど、そんなの入れて大丈夫?」
「インプラント治療に必要な骨が足りないから、治療が出来ないと言われている」
日々診療を行っている中で、患者さんからそんな不安や疑問のお声を沢山耳にします。
インプラント治療を調べる中で「骨造成が必要」と言われ、戸惑ってしまった方も多いと思います。
この記事ではまず、「骨造成とは何か?」から「骨造成を避けた治療法」まで、わかりやすくご紹介します。
不安を安心に変える第一歩として、ぜひ最後までご覧ください。
骨造成をせずに
インプラント手術は可能?

結論から言うと骨造成をせずにインプラント手術を行うことは可能です。
骨造成とは何か、なぜ骨造成が必要になるのかから順を追って見ていきましょう。
骨造成とは何か
インプラント治療を希望する方にとって、顎の骨の量や質はとても大切です。
歯を失った部分では、骨が痩せてしまっていることが多く、インプラントを支えるのに十分な骨がない場合があります。
このようなときに行われるのが「骨造成」という治療です。
骨造成について
骨造成とは、インプラントを安定して埋めるために、足りない骨を増やす外科的処置です。
一般的には、人工の骨補填材や自分自身の骨を使って、骨が足りない部分を補います。
数ヶ月かけて骨が再生・定着するのを待ち、その後インプラントを埋め込みます。
人工の骨補填材の場合は吸収に約半年から1年の期間がかかります。
また自分自身の骨を使う場合は採取できる量に制限があること、状況によっては手術部位が二か所以上になるため、身体の負担が大きくなるというデメリットがあります。

「骨がない」と言われたのはなぜ?
歯を失ったあとのあごの骨は、使われなくなることで自然と痩せてしまいます。
これを「骨吸収」と呼びます。
骨は日常的な咬む刺激によって維持されていますが、歯が抜けるとその刺激が失われ、時間の経過とともに骨はどんどん減少していきます。
特に抜歯後そのままにしておくと、インプラントを支えるのに十分な骨量が確保できない状態になることがあります。
このような骨吸収への対応策として、骨造成が行われることがあります。
骨造成にはさまざまな方法があり、減ってしまった骨の量や部位に応じて選択されます

骨造成の方法
骨造成にはいくつかの方法があります。代表的なものをご紹介します。
GBR法(骨誘導再生法)
これは骨が足りない部分に人工骨を詰め、特殊な膜で覆って骨の再生を促す方法です。
特殊な膜で囲んだ中に人工骨をパンパンに詰めてソーセージのようにするソーセージテクニックと呼ばれる方法もあります。
人工骨の種類にもたくさんの種類があります。
牛の骨を利用した人工骨、ヒトの骨を利用した人工骨、自分の骨を利用するものがあります。後者になるほど成功率が良いとされています。
特殊な膜は骨ができた後に取り除くことが多いので骨造成とは別に膜を取り除く手術も必要になります。
サイナスリフト
上顎の骨は「上顎洞」という名前の副鼻腔につながっています。
上顎の骨が薄い場合に、上顎洞側に骨を造ることをサイナスリフトと言います。
上顎洞にはシュナイダー膜という膜が元々あるので、その膜を破らないように剥がして、人工の骨を詰めることで骨を造ります。
膜を破らないようにするためには、骨を大きく削って中の様子がよく見えるようにしなければなりません。
そのためサイナスリフトは身体への負担が大きく、痛みや腫れが伴うことが多いです。
そんな身体への負担を抑えるために、次のソケットリフトという方法が登場しました。
ソケットリフト
ソケットリフトとは歯を抜いた後のくぼみ(ソケット)から骨に穴を開けて、部分的に上顎洞に骨を造る方法です。サイナスリフトに比べて骨を削る量が少ないため、痛みや腫れが少ないという利点があります。
ただし前述したシュナイダー膜が破れてしまうことが多く、破れないように人工の骨を詰めていくためには熟練の技が必要です。
いずれも、インプラントをしっかり支える骨を作るための重要な治療ですが、術後の腫れや治療期間の延長といった負担もあります。
骨造成のメリット・デメリット
骨造成のメリット
①インプラントを理想的な位置・深さに埋め込むことが可能
骨造成を行うことで、インプラントを理想的な位置・深さに埋め込むことが可能になります。
②エビデンスに基づく安心感がある
インプラントの周囲に十分な骨(一般に2mm以上)がある方が予後が良いという論文報告があり、これを根拠として多くの歯科医院で骨造成が採用されています。
世界的な研究データに基づく治療法であるため、エビデンスに裏付けられているという安心感があります。
※ただし、これらの研究は骨格の大きな欧米人を対象としたもので、日本人にそのまま適用するのは現実的ではないという見方もあります。
骨造成のデメリット
①手術の回数が増える
骨造成を行う場合、インプラントを入れる手術とは別に、骨造成のための追加手術が必要になります。そのため、単純なインプラント手術よりも治療工程が増えるため、身体的・心理的負担を感じられる方がいらっしゃいます。
②治療期間が長くなる
骨造成後は、骨がしっかりと形成されるまでの治癒期間(通常であれば3~6ヶ月程度)が必要です。その後にインプラントを入れる手術を行うため、治療全体にかかる期間が長くなる傾向があります。治療を受けられる方の年齢や体調、骨の状態によってはさらに長くなることもあります。
③痛み・腫れがある
骨造成は外科手術の中でも大掛かりな手術であるため、手術後に強い痛みや腫れ、内出血などの症状が現れやすいです。
④費用がかかる
骨造成は保険が適用されない自由診療となります。そのため、インプラント治療に加えて追加費用が必要となります。使用する材料や処置の種類によって異なりますが、数万円~十数万円程度かかることもあります。
⑤見た目が悪くなる
人工的に造った骨はボコボコしているため自分の骨とは見た目が異なります。
また歯ぐきを何度も切開した傷跡が残ってしまい見た目を悪くすることもあるため、特に前歯の骨造成には注意が必要です。
⑥その他
感染のリスクや、骨が思うように増えなかった場合の再治療など、想定外のことが起きる可能性もあります。
そのため、できるだけ骨造成を避けたいと考える方も多いのが現実です。
骨造成は本当に必要?

インプラント治療において骨造成はすべての方に必要というわけではありません。
CTやレントゲンで骨の厚みや高さを正確に調べたうえで、必要性を判断します。
最近では、骨造成を行わずにインプラント治療が可能なケースも増えています。
骨の少ない部分を避けてインプラントを入れる方法や、短い・細いインプラントを使用する方法もあります。
骨造成はあくまで選択肢の一つであり、患者さんの希望や体の状態に応じて、柔軟な治療計画を立てることが可能です。
骨造成をしないインプラント手術
骨造成をせずにインプラントを行う方法も、近年の技術進歩により広がっています。
例えば、特殊な形状のインプラントや、骨の少ない部分を避けて斜めに埋入する「傾斜埋入法」などがあります。
手術の回数や期間を減らせるため、身体的・経済的負担も軽減できます。
当院では以下のような方法を採用しています。
抜歯即時インプラント
「抜歯即時インプラント」は、歯を抜いたその日にインプラントを埋め込む方法です。
抜歯直後はまだ骨がしっかり残っていることが多いため、骨造成をせずに済む可能性があります。
ただし、すべての患者さんに適応できるわけではなく、骨の状態や感染の有無、噛み合わせなどをしっかり見極める必要があります。
手術回数を減らしたい方や、治療期間を短縮したい方にとって、有力な選択肢のひとつです。
ショートインプラント
ショートインプラントとは、通常よりも短いインプラントのことです。一般的には骨内部に入る長さが7mm以下のものをいいます。
長さが短い分、直径を太くして骨と接する面を大きくすることで安定します。
ショートインプラントを使用することで、従来ではサイナスリフトやソケットリフトが必要だった症例も、これらの手術をせずにインプラントを入れることが可能になります。
当院の考え方
当院では、「自分の家族や友人、そして自分自身が受けたいと思える治療を提供すること」をモットーにしています。
その視点から骨造成について考えたとき、私たちはそのデメリットの大きさに着目しています。
たとえ骨造成によってインプラントを理想的な位置に埋入できたとしても、そのために患者さんが強い痛みや顔の腫れに耐えなければならず、治療期間が延び、手術費用も大きくなる――
それが患者さんにとって本当に価値のある治療か?と考えると、私たちは「そうではない」と感じています。
また、これはあくまで業界内の噂レベルの話ではありますが、骨造成を専門とする著名な先生でさえ、ご自身が治療を受ける際には骨造成を避ける方針の医師を選んでいるという話も耳にします。
私たちは、自分が受けたくない治療を患者さんに提供することはしません。
できるだけ身体への負担が少なく、時間的・金銭的コストも抑えられる方法で、十分な予知性と満足のいく結果を得られるインプラント治療を追求しています。
まずはお気軽に、ご相談ください。
監修者

山﨑 剛之 | YAMASAKI takeyuki
大阪大学歯学部卒業後、複数の医療法人歯科医院にて臨床経験を積み、2022年「谷町六丁目しちご歯科・矯正歯科」を開院。『医院に関わるすべての人を幸せにする』ことを理念に据え、患者の時間と生活の質にこだわった歯科医療を提供している。
略歴
昭和63(1988)年 兵庫県三田市生まれ
平成19(2007)年 大阪大学歯学部入学
平成25(2013)年 大阪大学歯学部卒業
平成25(2013)年 医療法人星真会アモウデンタルクリニック 研修医
平成26(2014)年 同医院研修修了、勤務
平成28(2016)年 医療法人恵翔会なかやま歯科 勤務
令和4(2022)年 谷町六丁目しちご歯科・矯正歯科 開院
所属学会
・日本顎咬合学会
・日本歯周病学会
資格
・日本顎咬合学会 認定医
所属スタディグループ
・JIPI
・N.H.K
出版・執筆歴
・QDT -Quint Dental Gate- 2019年6月号(クインテッセンス出版)
「築盛スペースが少ないため、オペークセメントとオペークデンチンを併用したマスキング方法で対応した症例」
・QDT -Quint Dental Gate- 2020年9月号(クインテッセンス出版)
「中切歯単冠のモノリシックジルコニアクラウンへの応用」
学会発表
・平成29(2017)年 日本顎咬合学会「再現性のあるCRバイトの採得法ならびにその確認法について」
・平成30(2018)年 日本顎咬合学会「口腔内スキャナーで拡大するデジタルデンティストリーの可能性」
・令和1(2019)年 日本顎咬合学会「失活歯の予後を考慮し、側方ガイドを修正した咬合再構成の一症例」
・令和2(2020)年 日本顎咬合学会「IOSにより製作された インプラント上部構造がもたらす恩恵」
・令和4(2022)年 日本顎咬合学会「上顎智歯を近心移動させることにより咬合回復を図った一症例」
・令和5(2023)年 日本顎咬合学会「ルートメンブレンテクニックを用いたインプラント症例」
・令和6(2024)年 日本顎咬合学会「審美治療の選択:矯正治療とセラミック補綴の比較」
・令和7(2025)年 日本顎咬合学会「臼歯欠損症例におけるインプラント先行埋入の妥当性」
参加講習会
・JIPI ペリオ・インプラントコース
・M.A.U オーラルリハビリテーションコース
・M.A.U 臨床審美歯科コース
・GPO ベーシックコース
・Dr.尾島 アライナー矯正クリニカルコース
・SMA 習得コース
・Dr.青島徹児 ダイレクトボンディングセミナー
・大阪SJCD ステップアップミーティング
・大森塾
・コンサルテーションプロセスコース
・Dr.神戸 歯内療法セミナー
その他多数